2018年の働き方改革関連法の成立によって、企業は今、さまざまな変革を求められています。
その中の一つが、働き方改革によって明確化された、残業時間の上限規制への対策です。
残業時間の上限規制について正しい知識を身につけると共に、企業が取るべき対策について学んでいきましょう。
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働き方改革による残業時間の上限規制とは
残業時間の上限規制とは、従業員に時間外労働をさせられる時間の上限を定めたものです。
具体的な数字は、「月45時間・年360時間」で、特別な理由がない限り、これを超えることは認められません。
残業時間の上限規制について正しい知識を身につけるためには、まず「残業時間」の意味について把握しておきましょう。
法定(時間)外残業
今回上限規制が設けられたのは、「法定時間外労働」についてです。
法定労働時間というのは、労働基準法で定められた「1日8時間/週40時間」という労働時間のこと。
これを超えて行った残業を、「法定(時間)外残業」と言います。
法定(時間)内残業
一方で、「1日7時間契約で働いている人」が1時間残業した場合、これは「法定(時間)内残業」と言います。
たとえば、「月に50時間残業した」という方の場合でも、「その内の25時間が法定内残業であった」というケースにおいては、残業時間の上限規制には引っかかりません。
あくまでも、「法定外残業が上限を超えた場合に、問題になる」ということです。
あいまいなルールの厳格化
実は働き方改革関連法が成立する前から、法定労働時間は「1日8時間/週40時間まで」とするルールは存在していました。
しかし、企業が従業員側と結ぶ36協定に特別条項を設けることで、実質的に「上限なしの残業」が可能に。
こうした実態を規制するために行われたのが、残業時間の上限規制です。
臨時的な事情があって労使が同意する場合においても、以下のルールを守る必要があります。
- 繁忙期であっても、月の残業時間の上限は100時間
- 複数月の残業時間を平均した場合の数字が、80時間以内(休日労働含)
- 月45時間を超える残業が認められるのは、年間で6ヶ月まで
- 年間で720時間まで
これまでうやむやになっていたルールを、より明確に、そして厳格化するためのルールであり、違反した企業には罰則が科せられます。
働き方改革による残業時間の上限規制はいつからか
働き方改革によって定められた残業時間の上限規制。
その施行は、大企業で2019年4月から、中小企業で2020年4月からです。
ただし一部事業・業務においては、2024年3月までの期間、その適用が猶予されています。
特に中小企業においては、施行からまだそれほど時間が経過していません。
「きちんとルール化できていない」という場合は、早急な対応が求められます。
残業時間の上限規制に違反した際の罰則
今回の働き方改革関連法による残業時間の上限規制が注目された理由の一つが、ルールに違反した場合の罰則が定められた点です。
法改正の前までも、一応規制は存在していましたが、それを守らなかった場合でも行政指導のみで済んでいました。
こうした状況を改善するため、罰則についても明確化されたのです。
上限規制に違反した場合の罰則は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金。
これは違反した従業員1人についての罰則であり、人数が増えればその分罰金の合計金額も大きくなります。
「気付かないまま違反していて、罰金の負担が非常に重くなってしまった!」なんてことがないよう、必要な対策を講じておきましょう。
残業時間の上限規制が猶予・除外される職種・事業
中小企業においても、2020年4月から施行されている残業時間の上限規制。
2021年現在、いくつかの職種や事業においては、その施行が猶予されています。
建設事業と自動車運転の業務、医師については、2024年3月31日まで、規制適用を猶予されています。
2024年4月以降も、一般的なケースとは扱いが異なるので注意しましょう。
たとえば建設事業において、災害の復旧・復興事業に取り組む場合、「月100時間未満」「残業時間の平均が80時間以内」というルールは適用されません。
自動車運転の業務の場合、特別条項付き36協定を締結した場合の時間外労働時間の上限は、年間で960時間になります。
また「月100時間未満」「残業時間の平均が80時間以内」「月45時間を超える残業が認められるのは、年間で6ヶ月まで」というルールについても適用されません。
医師についての具体的なルールは、今後詳しく決定されます。
また鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造事業者も、上限規制の適用が一部猶予されています。
「年100時間未満」「残業時間の平均が80時間以内」の2つが適用されていませんが、2024年4月以降は、全てのルールが適用されます。
猶予・除外に関するルールは、分かりにくく複雑なもの。
「自社の場合はどうなのかわからない」「2024年度以降に向けて、どう対策するべきなのか?」と悩んだときには、専門家に相談するのがおすすめです。
残業時間削減のために企業が取るべき3つの対策
これまで、従業員の残業が常態化していた企業にとって重要なのは、残業時間削減のための具体的な取り組みです。
従業員が残業しなくても業務を回していける環境を整え、人件費の削減や従業員満足度の向上につなげていきましょう。
そのために実践できる、3つの対策を紹介します。
対策①:業務を標準化して生産性を向上させる
残業時間を削減するために、欠かせないのが生産性の向上です。
「でも具体的に何をしたら…」と思ったときには、業務の標準化に取り組みましょう。
業務の標準化とは、誰がその業務を行っても、一定の効率・品質を維持できるよう、環境を整えることを言います。
業務が属人化している場合、「その人以外が業務を担当すると、時間がかかってしまう」「品質が安定しないため、やり直し作業が発生してしまう」といった問題が発生しがちです。
標準化できる業務はしておくことで、より多くの人で業務を分担できる体制が整うため、生産性向上につながっていきます。
対策②:業務量の調整
一部の従業員のみに業務量が集中している場合、残業時間の上限規制に引っかかってしまう恐れがあります。
こうした状況を改善するため、まずはそれぞれの従業員がどの程度の業務を担当しているのか、現状把握を進めていきましょう。
その上で、従業員別に業務量が適正かどうかを判断していきます。
業務量が多すぎて残業が発生している場合、業務の均一化を図ります。
業務量に問題がない場合は、業務プロセスに注目して改善を進めていきましょう。
対策③:従業員の勤怠管理を徹底する
残業時間を削減するためには、従業員の勤怠管理を徹底して行う必要があります。
勤怠管理ができていない場合、誰がどの程度残業しているのか、把握できなくなってしまうでしょう。
また残業時間の上限規制に関連して、今後「サービス残業」に関する問題が発生するのでは…と予測されています。
「残業時間は増やせない、でも自分の業務は終わらない」という状況になれば、サービス残業が常態化する恐れもあります。
従業員のモチベーションが低下し、離職率上昇の原因にもなりかねません。
従業員の勤怠管理を徹底するためには、専用のシステムを導入するのがおすすめです。
従業員一人ひとりの勤怠状況を見える化することで、業務効率の改善や生産性の向上にもつなげやすくなるでしょう。
まとめ
働き方改革関連法が施行されたことにより、残業時間に関するルールも改正されています。
より働きやすい環境を作るため、また生産性を向上させるために、残業時間削減に向けた、具体的な取り組みをスタートしましょう。
勤怠管理を徹底するための勤怠管理システムや各種専用ツールなど、導入することで企業の課題へとつなげられる仕組みは数多く存在しています。
「自社に合うシステムがわからない」「具体的な導入方法がわからない」といった場合のご相談は、フェニックスマネジメントまでお問い合わせください。