テレワークが推進される昨今、今や日本全国の3割の企業が導入する働き方になりました。テレワーク設備導入に対応できる資金力のある大企業だけではなく、中小企業もテレワークへの対応をおこなっています。
中小企業のテレワーク導入は課題が生じがちですが、その課題はおおむね解決できるものです。中小企業のテレワーク導入に関する課題、そして解決策や成功事例についてご紹介します。
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中小企業のテレワーク導入率
テレワークの導入率は大企業ほど高い傾向にあります。しかし中小企業がテレワークに対応していないかと言えばそうではありません。
2021年5月の緊急事態宣言時、東京都内では中小企業全体の38.4%がテレワークを実施しています。(東京商工会議所・2021年6月16日調べ)
大企業に限らず、中小企業でもテレワークの導入が求められる時代だと言えるでしょう。
中小企業がテレワークを導入するメリット
中小企業のテレワーク導入は、いくつものメリットが生じます。人材面、資金面でのメリットが特に大きい傾向があります。次にご紹介する3つの項目は、テレワーク導入を考えている企業にとって無視できないメリットになるでしょう。
メリット①:人材の確保
テレワークは時間や場所に柔軟性を持たせて働ける特徴があります。通勤の必要がないため、諸事情で通勤が困難な人(育児・介護者、遠方居住者、高齢者など)が離職を選択する確率が減少します。
人材確保に困難を感じる中小企業が少なくない現代、テレワークが人材確保に大きく貢献する可能性は決して低くありません。
メリット②:コストの削減
テレワークの導入により、まず交通費の削減が見込めます。オフィスを使う人も著しく減少するため、光熱費もカットできるでしょう。
それだけではなく、テレワークが進み、社員全員のワークスペース確保が不要な状況になれば、現在よりも小規模で賃料の安いオフィスへの移転も可能です。
メリット③:補助金、助成金が受けられる
中小企業がテレワークを導入するにあたり、どうしても避けて通れないのが資金面(初期費用)の問題です。しかしこれを解決するため、国では複数の補助金・助成金を用意しています。
- IT導入補助金:中小企業・小規模事業者のソフトウエア費、導入関連費等の一部を補助するための制度
- 働き方改革推進支援助成金:テレワークを導入する中小企業を支援するための制度
制度ごとに詳細な要件が定められています。もし要件に該当するようであれば、ぜひ各種補助金・助成金の活用を検討してみてください。
中小企業がテレワークを導入する上で解決すべき課題と解決策
テレワークの導入後、企業ではいくつかの課題が浮上する傾向があります。コミュニケーション、部下のマネジメント、勤怠管理など、代表的な課題とその解決策についてご紹介します。
課題①:コミュニケーション
おもにパソコンやタブレット、スマートフォンを用いておこなわれるテレワークでは、上司と部下、社員同士のコミュニケーションが希薄になってしまう傾向があります。オフィスでは気軽に交わしていた雑談も、オンラインごしになることによって減少しがちです。
コミュニケーション不足は業務上の情報共有がスムーズにいかない原因になります。また、社員の性格によっては孤独とストレスを感じることも。業務上の問題や社員の精神衛生に関わるため、積極的な解決が望まれる課題です。
効果的な解決策としては、コミュニケーションツールの導入です。社員同士のコミュニケーションが取りやすくなるよう、社内SNSやグループウェア、ビジネスチャットといったツールを導入すると効果的です。
可能であればオンライン研修のような、通常業務以外で社員が集合する機会を作るのも良いでしょう。研修による知識・経験の向上のほか、機会を共有したことによってコミュニケーションが深まるという効果が期待できます。
課題②:部下のマネジメント
テレワーク導入前は直接見て指導していた業務内容も、テレワークで距離が離れ、なかなかしっかりとした指導やフォローができず、充分なマネジメントができないというケースがあります。
マネジメント不足は業務に関するスキルや経験の積み重ねに悪影響が出るほか、勤務態度や仕事の進捗が把握しきれないことも。
業務に影響が出てしまうこと、部下が「きちんとした指導がされていない」「自分は正当な評価をされていないのでは」という不満を感じかねない状況を招きかねないことなどが考えられるため、やはり解決したい課題です。
解決策としては、Web面接の機会を設け、オフィスで対面で話しているような環境の構築です。じっくりと話す時間を取り、部下の現状や不満について真剣な聞き取りをおこないましょう。
課題③:勤怠管理
テレワークは出勤・退勤が目視しにくいため、勤怠管理が難しくなる・複雑化するという問題があります。今まではタイムカードや出勤簿による勤怠管理をおこなっていたとしても、テレワークでは不可能です。
解決策としては、勤怠管理システムの導入が挙げられます。パソコン・タブレット・スマートフォンなどの多種類のデバイスからリアルタイムでアクセスできるシステムなら、効率的で正確な勤怠管理が可能になります。
出勤・退勤をリアルタイムで管理できるということは、長時間労働を防ぐことにも繋がります。勤務状況が見えにくいテレワークだからこそ、気を付けておきたい部分ですね。
中小企業のテレワーク導入成功事例
中小企業でのテレワークはどうしても課題が生じがちですが、その課題を解決し、成功した事例も数多く見られます。中小企業のテレワーク導入の成功事例を見てみましょう。
事例①:向洋電機土株式会社
テレワークのメリットである人材確保での成功事例です。女性が少ない建設業界で、将来的な労働力確保を考慮し、テレワークを導入。個人の事情に応じた働き方ができるテレワークは、家庭を優先せざるを得ない傾向の女性社員の離職をとどめる効果を発揮しました。
当初は人材確保を主軸にしたテレワーク導入でしたが、諸経費の削減や社員のモチベーションアップに繋がるという想定外の効果も見られました。
参考:向洋電機土株式会社
事例②:(一般社団法人)福祉情報技術サポートセンター
テレワークで障がい者を多数雇用し、在宅勤務の実習をおこなっています。テレワークの導入で新人研修に必要なコストが削減できました。
また、コミュニケーションツールの活用、入力補助装置の導入で、従来よりも大きく業務効率を伸ばしています。じつに2倍にもなっており、テレワーク導入の大きな成功例です。
また、障がい者の雇用機会の可能性を広げたとも言えます。この成功事例は社会的意義があると言っても過言ではないでしょう。
事例③:株式会社エー・トゥー・ゼット
外国語指導助手の派遣会社での成功事例です。現場までの移動時間を効率化するため、テレワークを導入。社員の自宅から現場まで効率の良い移動を実現するとともに、従来は社内でおこなっていた業務も自宅でできるようになりました。
結果として、移動時間の短縮、残業時間のカットに繋がり、ワークライフバランスの向上が生み出されています。育児中の社員も、テレワーク導入によって余裕を持った働きかたができているそうです。
まとめ
テレワークは多くのメリットがあり、新型コロナウイルス感染症対策のほか、働き方改革の一環としても重要な意味を持っています。
中小企業・小規模事業者のテレワーク導入は、初期費用の心配がありますが、補助金・助成金で大きな助けが得られます。資金面に不安があれば、ぜひそのような制度を積極的に利用しましょう。
中小企業でもテレワーク導入の成功事例は数多く見られます。業務の効率化、人材確保などのメリットを考慮し、新しい働き方のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。