現在、新型コロナウイルスの感染拡大によって、ジョブ型雇用に注目が集まっています。
ジョブ型雇用とは、職務内容が明確に定められたうえで、労働の成果に対して評価がなされる雇用制度のことです。
しかし、ジョブ型雇用とは一体何なのか、どんなメリットがあるのかなど、その実態はまだあまり知られていません。
ジョブ型雇用は欧米諸国ではすでに導入されているものの、日本ではまだ導入している企業は少なく、これから広がっていくであろう雇用制度です。
そこで今回は、ジョブ型雇用とは何なのか、導入するメリット・デメリットや導入事例を紹介します。
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ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは、労働時間に対して評価するのではなく、従業員に職務内容を明確に示したうえで、労働の成果に対して評価する雇用制度のことです。
ジョブ型雇用は欧米諸国ではすでに広く普及しているのに対し、現在の日本ではメンバーシップ型雇用が一般的です。
では続いて、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いについて見ていきましょう。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
現在の日本で広く普及しているのは、メンバーシップ型雇用です。
欧米諸国ではすでに広まっているジョブ型雇用と、何が違うのでしょうか。
ジョブ型雇用は、従業員に職務内容を明確に提示し、労働の成果に対して評価がなされる雇用制度です。
そのため、従業員のスキルや経験をベースに仕事をするスタイルと言えます。
一方メンバーシップ型雇用は、職務内容および勤務地などを限定せずに、まずは会社に属して働きながらジョブをこなしていく雇用制度です。
一般的には、労働の成果に対してではなく、労働時間に対して評価がなされます。
メンバーシップ型雇用は、従業員のスキルや経験ではなく、会社への所属をベースに仕事をするスタイルと言えます。
ジョブ型雇用のメリット
ジョブ型雇用のメリットとして、以下の3つが考えられます。
- 異動や転勤がほぼない
- 業務の成果に対して報酬が発生する
- 人材の流動性がある
ジョブ型雇用の業務は専門性が高いものが多く、業務内容や勤務地などが限定的な場合がほとんどです。
そのため、異動や転勤がほぼありません。
また、給与に関しては、労働時間ではなく成果に対して支払われます。
職務記述書に記載されている業務を達成できたかどうかに応じて、報酬が発生するのです。
さらに職務の内容や待遇などが明確に決められているジョブ型雇用では、仮に人材のミスマッチがあったとしても、スムーズに対応することが可能です。
メンバーシップ型雇用ではひとつの会社に長く務めることを重視しますが、それに比べてジョブ型雇用では人材の流動性が高いと言えます。
ジョブ型雇用のデメリット
ジョブ型雇用にはメリットもありますが、デメリットもあります。
ジョブ型雇用のデメリットとして考えられるのは、以下のようなものです。
- 会社の都合による人材の配置ができない
- 組織の柔軟性が損なわれることもある
- 明確なルールがない場合はトラブルに繋がることもある
ジョブ型雇用で従業員に任せられる業務は、職務記述書に記載されている業務のみです。
そして職務記述書に記載されている業務が必要なくなった場合、その業務を任されていた従業員は解雇されることになります。
こういった背景から、会社の都合で人材の配置を換えることが難しいのです。
また、会社の中には複数の業務をこなして柔軟に動ける人材も必要なことが多いですが、ジョブ型雇用で業務が限定された人たちばかりが集まってしまうと、柔軟性に欠ける組織となってしまう可能性もあります。
メリットが多く、今たくさんの企業から注目されているジョブ型雇用ですが、運用にあたってルールがしっかりと定められているわけではありません。
そのため、ルールが曖昧なままジョブ型雇用を採用している企業も少なくないのが現状です。
2019年5月、内閣府より「ジョブ型正社員の雇用ルール明確化に向けての提言」が発表されました。
その内容は、労働契約の書面による確認は義務付けられていないことや、勤務地などの限定が明確に定められているわけではないことなどです。
こういったルールを曖昧にしていると、後々トラブルが起こりかねないことを頭に入れて、慎重に導入する必要があります。
ジョブ型雇用の導入事例
ここからは、ジョブ型雇用を実際に導入している企業の事例を紹介します。
ジョブ型雇用の導入を考えている場合は、ぜひ参考にしてみてください。
導入事例①:富士通
富士通は2020年4月からジョブ型雇用を導入しています。
富士通の公式サイトによると、富士通独自のジョブ型雇用制度として「FUJITSU Level」を基準に報酬水準を決めるそうです。
「FUJITSU Level」とは、売り上げなどの定量的な観点にプラスして、職務の難易度、専門性、多様性などの観点から定められた水準です。
富士通はジョブ型雇用を導入することにより、従業員がより難易度の高い職務にチャレンジし、良い成果を出した際には高い報酬が支払われることが明確にされています。
富士通におけるジョブ型雇用は、より高い業績を収める優秀な人材を優遇するシステムと言えそうです。
導入事例②:日立
日立は2021年4月からジョブ型雇用を導入しています。
日立は事業のグローバル化に合わせて2011年頃からグローバルに対応した人事制度を取り入れています。
現在、日立の人事担当者は3分の1が日本人ではない構成とのことです。
多様性を重視している様子がうかがえますね。
日立のジョブ型雇用導入は、日立が以前から進めてきた事業のグローバル化に対応するための人事制度改革の一環と言えます。
また日立は、こうした事業のグローバル化が背景にあったため、ジョブ型雇用の導入ができたのでしょう。
導入事例③:KDDI
KDDIは2020年にジョブ型雇用を導入しました。
KDDIはジョブ型雇用の導入により、業務内容に合わせて働く場所を選べ、リモート会議の推進などもしています。
またKDDIのジョブ型雇用では、市場価値を重視し、成果に応じた報酬を支払ったり、業務内容を明確に示したりといった内容の「KDDI版ジョブ型人事制度」を導入しており、2021年4月入社の新卒社員からは初任給を撤廃し、能力に応じた報酬体系を採用しています。
まとめ
ジョブ型雇用とは、職務内容が明確に定められており、職務の成果に対して評価がなされる雇用制度のことで、欧米諸国ではすでに広く普及しています。
ジョブ型雇用のメリットは、異動や転勤がほぼないこと、業務の成果に対して報酬が発生すること、人材の流動性があることなどです。
一方でジョブ型雇用のデメリットは、会社の都合による人材の配置ができないこと、組織の柔軟性が損なわれる可能性があること、明確なルールがない場合はトラブルに繋がるおそれもあることなどです。
日本でもすでにジョブ型雇用を導入している企業も出てきています。
ジョブ型雇用のメリットとデメリットを把握したうえで、すでに導入している企業の事例を参考に、ジョブ型雇用の導入を検討してみてください。
まだ導入を考えていない企業の場合も、これからますます広まっていくであろうジョブ型雇用について、知っておいて損はありません。
ぜひ本記事を参考に、ジョブ型雇用についての知識を身につけておいてください。