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介護業界はなぜ人手不足か?原因と対策を徹底解説
介護 人手不足

介護業界と言えば、「人手不足」というイメージが根強い業界です。
とはいえ、「いったいなぜこれほど人手が足りないのか?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、介護業界の人手不足の現状をお伝えすると共に、人手不足に陥っている原因についても解説します。
介護業界で人手不足の問題から脱却するための対策方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

 

介護業界の人手不足の現状

介護 人手不足

介護業界の人手不足問題を解決するためには、まずはその現状を正しく把握する必要があります。

求人情報をチェックしてみると、介護業界の情報は確かに目立ちます。
とはいえ、積極的な採用活動の成果もあり、介護職として働く人の数は、着実に増加しているのです。
厚生労働省が発表しているデータによると、平成12年度の介護職員数は54.9万人。
一方で、平成29年度には186.8万人と、3倍以上に増加しています。
平成28年度の183.3万人と比較してみても、3万人以上増えていることがわかります。

しかし、この程度の介護職員数の増加では、手が回っていないのが、日本の介護業界の現状です。
少子高齢化が急激に進んでいる今、要介護者の数もどんどん増えてきています。
平成29年度の要介護(要支援)者数は633万人ですから、人手不足で悩むのも当然だと言えそうです。

気になるのは、今後どうなっていくのかという点ですが、介護業界の人手不足はさらに深刻化するのでは……と懸念されています。
少子高齢化の波は、今後も続いていくはずです。
一方で、働き方改革の推進により、一人が対応できる仕事量は減少。
このため、現状よりもさらに多くの人手を確保する必要が出てくるでしょう。
日本の労働人口は、徐々に減少していきますから、どう対応していくのか、今から真剣に考えておくことが大切です。

参考:厚生労働省 「福祉・介護人材確保対策について(8ページ)

 

介護業界が人手不足である原因

 

介護業界の人手不足の要因は、増える需要(要介護者)に供給(介護職員)が追い付いていないからです。
毎年少しずつ増えてはいるものの、理想には追い付いていないのが、介護職における現実です。
では、募集活動を懸命に行っているものの、思うような結果に結び付いていない理由は、いったいどこにあるのでしょうか。
人手不足の原因として考えられるポイントは、以下の3つです。

 

原因①:高い離職率

人手不足ゆえ、他業種からの転職も受け入れられやすい介護業界。
未経験・資格なしでも、挑戦しやすいこともあり、採用率は決して低くはありません。
一方で、問題になっているのは離職率です。
新たな人が入ってきても、ある程度経験を積んだ段階で業界から離れてしまうため、人手不足が解消されないというのが現状なのです。

令和2年度の介護職の離職率は、14.9%。
平成19年度の21.6%と比較すると低減しているものの、離職率のさらなる低下が、人手不足解消に向けた一手だと言われています。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター 「令和2年度「介護労働実態調査」結果の概要について(2ページ)

 

原因②:介護業界へのネガティヴなイメージ

介護の仕事に対して、「仕事内容がきつい」「給料が安い」といった、ネガティヴな感情を抱く方もまだまだ少なくありません。
ネガティヴなイメージは、業界参入へのハードルを高くしてしまうもの。
イメージの改善も重要なポイントでしょう。

 

原因③:職場環境

介護の現場が抱える問題の一つが、職場環境についてです。
結婚や妊娠、出産、育児といった事情で、いったん仕事から離れる人は少なくありません。
こうした働き手が、復帰できる職場環境が整っていないという実情があります。
介護の仕事以外にも、選べる仕事は多くありますから、そのまま介護業界から離れてしまうケースも多く見られます。

 

介護業界における人手不足 対策方法

介護 人手不足 改善方法

では、介護業界の人材不足問題を解決するためには、どうすれば良いのでしょうか。
5つの対策方法を紹介します。

 

対策①:助成金の活用

介護業界の人手不足は、国にとっても非常に大きな問題になっています。
このため、人材確保や環境整備を進められるよう各種助成金が用意されています。

  • 特定求職者雇用開発助成金
  • 中途採用等支援助成金
  • 人材確保等支援助成金
  • 65歳超雇用推進助成金
  • 両立支援等助成金
  • キャリアアップ助成金
  • 人材開発支援助成金

該当する助成金を、賢く活用していきましょう。

 

対策②:高齢者雇用の推進

働きたい健康なシニア世代が増えている今、介護現場においても、高齢者雇用が推進されています。
もちろん、体力的な負担軽減や、多様な働き方を認める体制作りなど、さまざまな工夫が求められるでしょう。
とはいえ、うまく推進していくことにより、以下のような効果が生まれます。

  • シニア世代の働く場所の確保
  • 介護現場への多彩な人材の投入
  • シニア世代自身の介護予防
  • 介護業務の細分化による効率化

非常に有効な手段として注目されています。

 

対策③:両立支援

結婚や妊娠・出産を機に、介護の現場を離れる人が多いからこそ、両立支援も重要な対策となるでしょう。
自身のライフスタイルを維持しながらでも、無理なく働ける環境を作っていくことも、人手不足解消に向けた課題となります

 

対策④:外国人人材の受け入れ

近年注目されているのが、外国人人材の受け入れによって、人手不足解消を目指す方法です。
平成31年には、外国人の在留資格「特定技能1号」制度がスタート。
試験に合格した外国人スタッフが介護施設で5年間就労し、介護福祉士資格を取得すれば、そのまま日本で働き続けることも可能です。
すでに外国人スタッフを受け入れている介護施設も多く、今後も注目されるでしょう。

参考:
厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック(5ページ)

 

対策⑤:業務改善

人手不足を解消するためには、業務に潜む課題の解決も求められます。
より効率的に働くことは、介護の質の向上にもつながるでしょう。
また、業務改善によって細分化が進めば、短時間勤務や高齢者雇用もしやすくなります。

 

介護業界の人手不足解消 成功事例

介護職 成功事例

介護業界の中でも、人手不足問題を上手に解消した成功事例は少なくありません。
2つのケースを紹介します。

 

事例①:社会福祉法人甲山福祉センター

2020年に、創立50周年を迎えた特別養護老人ホーム「甲寿園」では、女性が働きやすい環境にこだわっています。
産前産後休暇はもちろん、つわり休暇や生理休暇、子どもが病気になったときの休暇制度も整備されています。
育児休暇を終えて職場に戻った際のフォロー体制も充実。
各部屋に天井走行リフトを設置し、労働環境の改善にも積極的に取り組んでいます。
新卒3年後の離職率は4.8%と、離職率が非常に低い職場です。

参考:リクナビNEXTジャーナル「【介護業界は変われるのか?】「人材定着」に本気で取り組む、介護業者と自治体の取り組みレポート

 

事例②:グループホームひまわり

グループホームひまわりは、ICTの積極的な活用によって、職員の負担軽減を目指す施設です。
利用者の情報は、見守りセンサーで随時確認できるシステムを採用。
呼吸数や脈拍数、状態変化といった重要な情報を、パソコンやタブレットで素早くチェック可能です。
職員の目が届きにくい部分に、適切なシステムを導入することで、精神的な負担軽減に役立っています。
また、利用者それぞれの状態を把握した上で、介護サービスの提供ができるため、質の向上にもつながっています。
業務効率化と負担軽減により、介護職員にとって働きやすい職場環境を実現しています。

参考:
きらケア研究所 「ICT活用で効果を実感!導入半年で業務効率化と負担軽減を実現した活用術-社会福祉法人信愛報恩会 グループホームひまわり-

 

まとめ

慢性的な人手不足問題を抱えている、介護業界。
さまざまな対策が取られているものの、まだその効果は十分ではありません。
少子高齢化や働き方改革の影響により、今後もまだまだ人手不足の状況が続くのでは……と予測されています。

人手不足の問題を解決するためには、職員一人ひとりにとって、働きやすい環境を整備することが重要です。
そのためには、施設全体のルールを変える必要もあるかもしれません。
また、全く新しい取り組みを実践していくことも大切でしょう。
介護業界のイメージは、少しずつではありますが、確実に変化してきています。
「より働きやすい職場にするためには、何をどうするべきなのか」という視点で、ぜひ具体的な取り組み方法についても検討してみてください。

 

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