運送業で問題になりやすいのが、「人手不足」です。
これから運送業をスタートしようと考えている方、また運送業をスタートして間もない方にとっても、「どう人材を確保するのか」は、非常に難しいポイントだと言えるでしょう。
運送業では、なぜこれほどまでに人手が足りていないのか、また事業者としてどう対応していくべきなのかを、わかりやすく解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
目次:タップで該当箇所へジャンプ
運送業の人手不足の現状と今後の予測
運送業界の人手不足は、長年続く問題の一つです。
厚生労働省が発表している「労働経済動向調査(2019年11月)の概況 (産業別正社員等労働者過不足状況と労働者過不足判断D.I.)」によると、2019年5月に、「従業員が不足している」と答えた運輸業・郵便業者は60%。
2019年8月は57%、11月にも56%と、非常に高い数字で推移しています。
2019年10月時点の「自動車運転の職業(ドライバー)」における有効求人倍率も、3.15倍と非常に高い水準です。
従業員数が足りていないため、ドライバー1人あたりの負担が上昇。
長時間労働になりやすいという問題も指摘されています。
では、今後運送業界における人手不足問題は、どうなっていくと予想されているのでしょうか。
残念ながら、今後はさらに状況が悪化するという予測が一般的です。
その理由の一つが、2024年4月に予定されている改正労働基準法の適用です。
改正労働基準法は、すべての労働者の、労働時間の上限を明確に定めたもので、2019年からスタートしています。
5年間の猶予期間を経て、2024年からは、いよいよ運送業界への適用がスタート。
残業できる時間の上限が厳しくなるため、「1人あたりの労働時間が減る」→「さらなる人手不足に陥るのでは…」と懸念されています。
参考:
厚生労働省「労働経済動向調査(2019年11月)の概況 (産業別正社員等労働者過不足状況と労働者過不足判断D.I.)」
厚生労働省「一般職業紹介状況[実数](常用(含パート))」
運送業界が人手不足の理由
そもそも、いったいなぜ運送業界は、これほどまでに深刻な人手不足に悩まされているのでしょうか。
その原因は、主に以下の3つです。
理由①:Eコマースの拡大による個別配送の増加
インターネットショッピングが一般的になった今、ドライバーが扱う荷物の量は格段に増加しています。
国土交通省が発表したデータによると、令和2年度の宅配便取扱個数は、48億3,647万個。
前年度と比較すると、荷物の数は5億1,298万個(約11.9%)も増加しました。
業務量が増えているにもかかわらず、働き手の数が増えなければ、ドライバー1人当たりの負担は増加してしまいます。
これにより、人手不足感が増していると考えられます。
参考:
国土交通省「令和2年度宅配便取扱実績について」
理由②:トラックドライバーの高齢化
運送業界に対して、「きつそう」「自分の時間が持てなさそう」と、ネガティブなイメージを抱く若者は、決して少なくありません。
若い世代の働き手が運送業界を敬遠することで、トラックドライバー全体の高齢化が進んでいます。
定年を迎え、仕事を離れる人が多い一方で、若い世代の労働力が育っていない点も、理由の一つと考えられるでしょう。
理由③:長時間労働
では、なぜ運送業は、若い世代に敬遠されてしまうのでしょうか。
その理由の一つとして考えられるのが、長時間労働の実態です。
一般的な労働者の、1日の労働時間の原則は8時間。
一方で、トラックドライバーの拘束時間は、1日当たり13時間以内が原則です。
忙しい時期には、1日当たり16時間までの拘束が認められていますし、ドライバー2人体制なら、一定の条件を満たしていれば20時間まで延長できます。
拘束時間には、運転中の休憩時間や荷待ち時間なども含まれていますが、それでもやはり、「1日の大半を仕事に費やさなければならない」という実態には変わりありません。
運送業界が人手不足を解消するための対策
インターネット社会の発達と共に、今後も需要が高まると予想される運送業界。
人手不足を解消し、2024年改正労基法問題を乗り越えるためには、いったいどのような対策を取れば良いのでしょうか。
3つのポイントを紹介します。
対策①:労働環境の整備
運送業界が敬遠されてしまう理由の一つは、間違いなく労働環境です。
労働環境の改善によって、若い人でも飛び込みやすく、また実際に働いている人が離職しづらい雰囲気に近付けられるでしょう。
具体的には、現在のドライバーたちが抱えている諸問題を解決するところからスタートすることをおすすめします。
- 給与の改善
- 長時間労働の是正
- 休日の取りやすさ
- 体力的な負担の軽減
- わかりやすいキャリアアップ制度の整備
- 福利厚生の充実
少し前まで、運送業は「体力的にはきついものの、もうかる仕事」として認知されていました。
しかし今、「体力的にきついだけではなく、もうからない仕事」という認識が広がっています。
給与の仕組みをわかりやすく整え、賞与や退職金に関するルールも明確化しましょう。
給与体系を歩合制から月給制に変える方法もおすすめです。
働き手にとっては、「仕事量にかかわらず、毎月安定した給料を得られる」という点が、非常に大きなメリットとなります。
また、将来につながる仕事環境を用意することも大切です。
「自分を大切にしてくれる会社」や「自分らしく過ごせる会社」、「将来のビジョンが見えやすい会社」は、多くの人に選ばれやすいでしょう。
対策②:女性ドライバーの採用
これまで、運送業に従事するドライバーと言えば、「男性」が一般的でした。
現在もまだ、女性ドライバー率は非常に低いというのが現実です。
女性ドライバーを積極的に採用すれば、労働力不足問題も解決できる可能性があります。
とはいえ、そのためには、女性にとって魅力的な職場を作り上げる必要があるでしょう。
給料や体力面での問題解決が求められるのはもちろん、以下のような点も考慮する必要があります。
- 産休や育休制度の整備と制度活用アピール
- 幅広い勤務体制の導入(短時間勤務やフレックス制度など)
- 職場の清潔感アップ
女性にとって、魅力的で働きやすい環境をすぐに整備するのは難しいかもしれません。
しかし、女性にとって魅力的な職場は、若い世代にとって働きやすい職場でもあります。
さまざまな人の事情やライフスタイルに合った働き方を提案できるよう、少しずつでも準備を進めていきましょう。
対策③:効率的な採用活動
もう一点、見落としがちなのが、採用活動をできる限り効率的に行っていくという点です。
採用活動の効率がアップすれば、より多くの求職者に出会える可能性があります。
採用活動を積極的に行うだけでは、すべての求職者をさばききれないリスクがあるでしょう。
こうしたリスクを低減するためにも、ぜひ採用活動の効率化を進めてみてください。
採用活動には、以下のような業務が発生します。
- 採用計画の立案
- 採用活動のための予算の策定
- 求人広告の掲載
- 応募者への対応
- 面接の実施
- 入社までの各種打ち合わせやフォロー
すでに人材不足に悩まされている業界で、これらの業務を効率良く進めていくことは、決して簡単ではありません。
こんなときには、便利なツールを活用しましょう。
採用管理ツールを導入すれば、ツール上でさまざまな業務を完結できます。
求人広告情報を一元管理したり、1つのシステム上で応募者対応を完了できたりするので、採用業務に携わる人の負担も軽減できるでしょう。
また、ツールを適切に活用できれば、それが採用力アップにつながる可能性もあります。
導入コストが低いツールを選択すれば、費用面での不安もありません。
まとめ
運送業界が抱える人材不足問題の根は、非常に深いと言えるでしょう。
解決のためには、ドライバーが抱えている問題や労働環境を1つずつ改善していくことが大切です。
運送業界の労働環境を考える上で、非常に大きな節目になるだろうと言われているのが、2024年の改正労働基準法の適用です。
「まだ何も準備ができていない」という場合でも、大丈夫です。
まだ少し時間がありますから、少しずつ環境を整えていきましょう。
フェニックスマネジメントがサポートいたします。