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【社労士監修】うつ病の社員を出さないために企業がとるべき対策を徹底解説
うつ病 社員 出さない 対策

うつ病を発症する働き手が増えている今、企業側が従業員に対して、どのようなメンタルヘルス対策を行うのかが重要視されています。
適切な対策を講じておかないと、さまざまなリスクを背負い込むことにもなりかねません。
具体的にどういった対策を取るべきなのか、うつ病になる主な原因と共に解説していきます。

 

社員がうつ病になる主な原因

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うつ病に対して適切な対策を取るためには、うつ病に関する基本的な知識を身に付けておく必要があります。
社員がうつ病になってしまう原因は、主に以下の3つです。

 

原因①:生活環境

家庭内で家族との関係性がうまくいっていないと、人は非常に大きなストレスを感じがちです。
このストレスがきっかけで、うつ病を発症してしまうケースがあります。

・家庭内の生活環境が大きく変わった
・離婚した

これらの状況では、特にストレスが大きくなりがちです。
仕事でストレスを感じていても、「家庭でリラックスして過ごせば気持ちを切り替えられる」という方は多いもの。
家庭でもストレスを感じるようになると、心のバランスを崩しやすくなります。

 

原因②:職場環境

企業として、もっとも注意しなければならないのが、こちらの理由です。
職場環境が従業員にストレスを与え、そこからうつ病へと進行してしまう可能性もあります。
職場環境でストレスになりやすいのは、主に以下のようなポイントです。

  • 職場の人間関係
  • 転職、就職直後のプレッシャー
  • 長時間労働
  • パワハラやセクハラ

職場で嫌なことがあっても、すぐに辞めるのは難しいでしょう。
「がんばらなくては」と意識し過ぎた結果、うつ病発症リスクが上昇してしまいます。

 

原因③:事故や病気

病気や事故がきっかけで生活環境ががらりと変わると、不安感や絶望感が強くなり、うつ病を患ってしまう方もいます。
「好きなことができない」「思うようには身体を動かせない」という状態は、精神的にも大きな負荷がかかるものです。
小さな事故や病気であれば、一時的に気分が落ち込むことはあっても、体調の回復と共に気持ちも上向きになっていく可能性もあります。
一方で、治療に長い期間を要するような事故や病気の場合、身体の状態と共に、精神的な状態についても、しっかりとケアしていく必要があるでしょう。

 

企業がうつ病の社員を出さないための対策

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企業には、うつ病の社員を出さないために、適切な対策を講じるよう通達されています。
2015年に発表された「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によると、以下の4つの対策が推進されています。

 

対策①:セルフケアを促す

うつ病になる人を1人でも減らすためには、まず従業員自身が「今の自分の状態」を敏感に察知する必要があります。
企業側には、従業員が自身の状態を把握できるような環境を作り、セルフケアできる環境を整備していくことが求められています。
具体的な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • セルフケアに関する教育研修
  • うつ病やストレスに関する情報提供
  • ストレスチェック制度の確立とチェックの実施

特にストレスチェック制度は、効果の高い取り組みとして注目されています。
従業員自身が、自分が抱えているストレスに気付くことで、その後の相談や治療に向けて、踏み出しやすい環境を整備できるでしょう。

 

対策②:ラインによるケア

従業員がうつ病にならないようにするためには、ストレスを感じにくい職場環境へと整備していく必要があります。
そのための方法が、ラインによるケアです。
個々の職場環境や業務状況から、管理監督者が具体的なストレス要因を把握し、改善する取り組みのことを指します。
具体的なケアの内容は以下を参考にしてみてください。

  • 職場環境等の把握と改善
  • 管理対象社員からの相談対応

企業としては、管理監督者が安心してラインによるケアに取り組めるよう、教育制度を充実させたり、積極的に情報を公開したりする必要があります。
また、ラインによるケアが確実に実施されるよう、適切な体制作りも求められます。

 

対策③:事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医や衛生管理者、心の健康づくり専門スタッフなど、産業保健にまつわるスタッフが、積極的かつ具体的に、メンタルヘルスケアに取り組むことも大切です。
専門家の立場でセルフケアやラインによるケアをサポートするほか、事業所全体でメンタルヘルスケアのためにどういった取り組みが行われるべきか、企画立案することもあります。
企業内のメンタルヘルスケアの、中心的な役割を担う存在と言っても良いでしょう。

 

対策④:事業場外資源によるケア

メンタルヘルスに関わる情報を、「できればあまり企業内の者に知られたくない…」と考える従業員も少なくありません。
このような場合でも適切なケアをするための方法が、事業場外資源によるケアです。
社員のうつ病対策や悩み相談のために、企業内のケアシステムを使うのではなく、メンタルヘルスケアの専門知識を持った外部機関やサービスを利用することを指します。

特に小規模事業所にとっては、事業所内に充実したケアシステムを準備するのは難しいでしょう。
地域産業保健センターなど、必要に応じて外部の専門家を活用することで、従業員に対して、より充実したケアを実施できるようになります。

ただし、事業場外資源によるケアを重視し過ぎると、社内のケアシステムが形骸化してしまう可能性も。
「主体性を持ってケアを行うのは、あくまでも事業者自身」という認識を持って、上手に活用していくことが求められています。

 

企業がうつ病社員を出さない対策をする重要性

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うつ病社員を出さないようにするため、企業側が本気で対策を取ろうとすれば、手間もコストもかかってしまうもの。
「そこまでして対策をしなければいけないのか?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

うつ病の社員を出すということは、以下のように、会社にとって非常に多くのリスクをはらんでいます。

  • 事業所全体の業績低下
  • 生産性の低下
  • 職場環境の悪化

うつ病を患うと、仕事に対する意欲や集中力が低下することがわかっています。
メンタルヘルスを害する社員が増えれば、生産性の低下につながりかねません。
対策を後回しにした結果、事業所全体の業績が低下してしまうようなケースも報告されています。

また、メンタルヘルスが原因で休職・退職する従業員が増えれば、残った社員にかかる負荷が大きくなってしまうでしょう。
過度なストレスや長時間労働がきっかけで、うつ病を発症しやすくなるという悪循環が生まれてしまいます。

2015年12月からは、労働安全衛生法の一部が改正。
従業員50人以上の事業場に対してストレスチェックの実施が義務付けられました。
(※従業員数50人未満の事業場は、当分の間努力義務)

 

労働安全衛生法 第66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
参考: e-Gov 法令検索「労働安全衛生法」

 

ストレスチェックによって得られた結果をもとに、医師による面接指導を受けたいという従業員がいた場合、速やかに実施する必要があります。
また医師による面接の結果、必要な措置があれば、速やかに講じるようにも定められています。

従業員のメンタルヘルスケアは、多くの企業にとって、法律に基づいた義務となっています。
正しい知識をもとに、適切な対策を講じていきましょう。

 

まとめ

うつ病社員の増加は、企業にとって非常に大きなリスクの一つです。
生産性の低下や業績ダウンなど、悪影響は避けられないでしょう。

また、法律改正によってストレスチェック体制の確立が義務付けられたこともあり、一刻も早く、適切な体制作りに取り組む必要があります。
産業医の確保や、企業として責任を持って対応できる体制作りについては、専門家のサポートも受けながら、1歩ずつ進めていくことをおすすめします。

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